ユースワークとは、地域コミュニティで子ども・若者の育ちを支える活動です。
私たちが伝えられるのは、研究会として学んできた欧州(イギリス、フィンランド、デンマーク、アイルランド等)のユースワークを前提にした内容ですが、ユースワークで大切にされてきたことは、子ども・若者が、自分の意思で活動や拠点に自由に参加し、自分がやりたい様々な活動を楽しむという「自主性(voluntary)の原則」です。そのため、学校のようにカリキュラム・時間割といった枠組みを基本的にもたず、その場をともにする子ども・若者・支援者たちが常に話し合いながら、活動を展開します。
ユースワークは19世紀後半の産業革命以降に生まれ、発達してきました。当初は教会や民間団体の活動でしたが、第二次大戦前後、ヨーロッパで福祉国家が発達する過程で、国・自治体も関与する活動になります。イギリス(イングランド)では、1960年代にはユースワーク(ユースサービス)はあらゆる若者に提供することが公的責任であるとの考え方も示され、各地にユースセンターと呼ばれる場が設置され、この仕事に携わるユースワーカーの育成、資格制度、雇用が始まります。今日では、フィンランドやアイルランドなど、国内法でユースワークを規定している国もあり、また、欧州評議会(Council of Europe)や欧州連合(EU)も、ユースワークをはじめとした若者政策を推進しています。
ユースワークには、ユースセンター等と呼ばれる拠点で展開される活動と、街中で展開される活動(デタッチド・ワークdetached work)があります。
ユースセンターは、若者たちが、特に目的なく気楽に立ち寄って時間つぶしをしたり、しゃべったり、個人で用意しにくい機材・空間を使って好きな音楽やアートに没頭したり、キッチンで食べ物を作ったり、色々な過ごし方ができる場です。国・地域によって制度は異なりますが、多くの場合、10代から場合によって20代前半までの年齢層を対象とし、誰でも(予約が必要な施設・装置以外は)無料で予約なしに利用できます。学校が終わる昼以降から夜9時頃までオープンしていることが一般的です。キャンプなど外に出かける活動もあり、若者たちは新たな人とも出会い、友達をつくっていきます。
デタッチド・ユースワークは、ユースワーカーがチームを組んで街中に出かけ、若者たちのたまり場を歩きながら、気になる若者たちに話しかけ、時間をかけて関わりをつくり、若者がやりたいと思うことを手探りしながら、一緒になにか活動を立ち上げていく実践です。
ユースワーカーは、子ども・若者と時間をかけて関わりをつくりながら、少しずつ信頼される存在・関係になっていくことを仕事の第一義にします。また、若者がやりたいことに応えて、音楽、ダンス、料理、アート等の文化・表現活動と若者を結びつけ、映画作り、国際交流、地域イベントといったイベント、プロジェクトに取り組む支援もします。文化・表現活動はユースワークの核となるもので、中には、自らアーティスト、ミュージシャン、映画制作等の専門性をもつユースワーカーもいます。欧州の多くの国ではユースワーカー、ユースリーダーといった名称で国の職業資格制度に位置づけ、養成や研修が行われています。