話をうかかがった相手:Anniina Väisänenさん
ウェブサイト:https://tyttojentalo.fi/
<以下の内容は、訪問時現在の内容です>
ここはフィンランドではじめてできたガールズハウス、すなわち‘女性’を対象としたユースセンターであり、開設して23年目になる。運営母体はLoisto SetlementtiというNGO団体で、職員は全部で50人程度。このガールズハウスの職員は5名だ。同じ団体がこの同じ建物でボーイズハウスも運営しており、となりのエスポ―という町にもガールズハウスがある。
ガールズハウスの利用者は10歳から28歳までの女性が対象で、一般的なユースワークとはまた別に、性に関わる活動も多く実施している。月曜・火曜・木曜の16時~20時昼から夜にかけて開いており、運動・マインドフルネス・手芸・絵画・歌などの様々な余暇活動をおこなっているが、敷居をできるだけ低くするためにほとんどのものは事前予約が不要だ。同時に、精神的配慮が必要な人などに対してはクローズドなグループ活動も実施し、別にセクシャルヘルスに関する相談も予約なしで実施しているそうだ(木曜15~17時)。そこではパートナーとの関係についての相談に乗るだけでなく、性病や妊娠の検査も無料で受けられるようになっている。
最近は、他機関との連携も積極的に行い、それらの機関からガールズハウスの情報を女の子たちに伝えてもらっている。ガールズハウスだけで活動していると届けられる対象・活動場所が限られてしまうので、学校や地域の公民館などでもグループワークを行い、グループ作りをすることも最近は活発にやっている。また、今年から3年の新たなプロジェクトとして、13歳から28歳までの障害のある女性を対象にした「トュットエンタル(ガール)」という活動も始めている。
コロナ以前は活動を対面でやることが多かったが、コロナになってからは相談やグループワークをオンラインでおこなうようになった。現在では、オンラインでの実施は減っているが、必要に応じてオンラインでのグループワークを続けている。
自分たちの活動では、社会の中に溶け込んでいける活動をすること、平等性―女性の立場の平等を守っていくこと、社会の中で若者の場所をつくり、若者の社会参加を実現することを大事にしているとのこと。
また、エンパシー ―共感― を今年のテーマにしており、利用者だけなく、職員同士でも共感しあいやっていこうとしている。利用者に敬意を払うように、同僚にも敬意をもってつきあうことを大事にしている。
毎日、仕事のあとに日誌を全員が書くように心がけていて、その日の出来事や感じたことをふりかえり書き記すようにしている。その書き方には統一性はなく人それぞれだという。週1度ガールズハウス職員5人全員でミーティングを行う際には、この記録を使いながら情報を共有している。そして、それを半年あるいは1年に1回見直して、女の子へのかかわり方について振り返りをおこなっているとのこと。また、月に1回外部から入ってもらい、5人全員でスーパーバイズを受けるようにしている。
それとはまた別に月1回、運営団体の職員50人全員で集まり、会議をしているとのこと。その際には毎回テーマが決められ、それぞれの事業が直面している課題について団体全体で考え、団体の業務全体を見直すこともある。
職員の能力を開発していく目的で、月2日までは有給を使って勤務日を個人の希望する学習に使うことができる。
自分たちの活動の発信の仕方としては、グループワークであれ何であれ、女の子1人ひとりをどう支援していくかが中心になるので、それぞれの女の子の人生に寄り添っていく中での変化を外部に発信していっている。
当事者である女の子たちの声を外部に届けていくことについては、インフルエンサーやアクティビストに来てもらって、メディアに発信してもらったりもする。
活動の評価について、ナラティブの方法はとっていないそうだが、女の子たちにはグループワークの前後に自分のコンディションについての振り返りをしてもらっており、一年に一度利用者にアンケートに回答してもらい、印象に残った出来事や今後の希望について聞いている。
活動資金は、ロッタリー(宝くじ協会)からの助成金の割合が一番高いが、ヘルシンキ市からの援助も受けている。資金提供を受けるにあたり、事業に対する制約や指示を受けることはあまりなく、10歳から28歳の女性を対象にするという点以外は、かなり自由度が高い。自分たちから事業を提案して実現していくことができる。年1回、1年間の成果の自己評価と会計報告書を書き、翌年度の助成金を申請するかたちになっており、年1回監査が入る。自分たちも長い歴史を持って活動しており、通ってきている子どもたちの声も日々聴いている。その中でこれも加えていく方が良いと感じたら、それをつけくわえたりしている。したがって、助成金の申請も毎年おなじわけではなく、1年の活動をふりかえって必要だと思ったことを反映して申請するようにしている。